バッハ晩年の未完の傑作《フーガの技法》に現代音楽の旗手エマールが挑むことになった。
選ばれた楽器はスタインウェイ社の逸品“245番”。世紀の録音まで1年・・・
ウィーン・コンツェルトハウスで、調律師がピアノに向かう――。
ロカルノ映画祭を皮切りに世界が熱狂した『ピアノマニア』は、スポットライトを浴びるピアニストではなく、彼らを影で支える調律師の存在に光を当てる異色ドキュメンタリーである。
主人公のシュテファン・クニュップファーは、ピアノの老舗ブランド・スタインウェイ社を代表するドイツ人調律師。
彼の務めは、使い慣れた自分の楽器を携帯できないピアニストが、演奏会や録音に万全の状態で臨めるようバックアップすることだ。
1台のピアノで様々な表現を追求するピエール=ロラン・エマールは、試し弾きのたびに「質問がある」と繰り返す。
次々と高いハードルを課す完璧主義者のピアニストと、職人としての意地とプライドを懸けて、無理難題を丹念にクリアする調律師―
究極の響きを求めて、両者一歩も譲らぬ“ピアノマニア”同志の共同作業の模様が、時に緊迫した、時に平穏な空気の中で映し出されていく。
世界の名だたるピアニストたちから絶大なる信頼を寄せられる現代最高峰の職人が過ごした “もっとも長い1年” の記録
1年間にわたる一大プロジェクトの狭間で、カメラはシュテファンの普段の仕事ぶりにも着目する。
注文の多い顧客に一途な彼を追ううちに、観客はコンツェルトハウスの“裏舞台”を目の当たりにする。
さらに、時代の申し子ラン・ラン、引退を目前に控えた巨匠・アルフレート・ブレンデルから、人気道化コンビのイグデスマン&ジョーまで…
彼に絶大なる信頼を寄せる錚々たるピアニストたちの貴重なリハーサル風景も、大きな見どころのひとつ。
“ブラボー!”の喝采の影に潜む、芸術への愛、完璧への執念、そしてわずかな狂気―音に魅入られたピアにマニアたちの熱い想いが、音楽の都ウィーン響き渡る。
演奏会では決して覗けない芸術の神秘へようこそ。
いま、“裏舞台”への幕が上がる!